終戦からひと月あまり。あたしは故郷へと舞い戻った。
懐かしい街並みと、懐かしい我が家――、幼い頃の記憶がたくさん詰まったその景色に、胸がきゅっと締め付けられるような感覚に陥(おちい)る……。
でも、それも最初だけだった。今のあたしの隣には、アスカがいる。永遠に愛することを誓ったパートナーが。
やってきたのは、アスカと共にある穏やかな日常。
これは、そんな日常の中で突如起こった事件から始まる話……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
思わず、あたしは絶叫した。
『ま、また荒らされてるうううぅぅぅーーーーーっ!!』
原因は“畑荒らし”だ。庭のちいさな畑の一角が見事に荒らされていたのである。
『一度とならず二度までも……、あたしが丹精込めて育てたジャガイモやニンジンが……』
『そこまで落ち込まなくても……。全部とられちゃったわけじゃないんですよ? それに、また育てればいいじゃないですか』
言って、やさしく微笑むアスカ。それでも……、ショックなものはショックだった。
『だってアスカ、楽しみにしてた……、から、さ……』
2、3ヶ月前、アスカがうきうきと植え付けをしていた様子を思い出す。そんなアスカの喜ぶ顔が見たくて、ずっと栽培してきたっていうのに……。
『ジュリアさん……』
『そろそろ収穫できると思ったんだけどなぁ……、はあ……』
『あっ、あのっ、元気をだしてくださいっ! 俺、なんとかしますから!』
『えっ?』
『俺にお任せをっ! だから、ジュリアさんは安心してお仕事にいってきてくださいっ!』
……そんなことがあったのが今朝のこと。
そして、あたしが帰宅すると――。
「おかえりなさい、ジュリアさんっ! 犯人無事に捕獲しました!」
彼は、見事に犯人を捕まえていた。
「え、ええっ……、どうやって?」
「トラップを仕掛けたんです。やっぱり、“タライ”トラップは偉大ですね」
……なにやら、知らない単語が出てきたが、とりあえず気にしないでおく。問題はそれよりも、だ。
「よく分からないけれど……、それで、犯人は?」
「家の中で反省させています」
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